有吉先生からのレポートです。


私たちのりんごの木は、横浜の港北ニュータウンという住宅地にあります。
マンションがたちならぶ賑やかな場所です。
りんごの木には、「おおきい組」と「ちいさい組」と「畑」があります。
おおきい組は小さなマンションの1階。店舗用のワンフロアを借りていて、4,5歳の子どもたち60人が毎日を過ごしています。
「ちいさい組」は一軒家。2,3歳児の保育をする家です。「畑」とよんでいるのは、近所にかりた土地です。ほんの狭い土地なのですが、小さな畑をつくったり、おもいっきりどろんこになってあそんだり.できる場所です。
今回、籾を精米してごはんを炊いた場所は「畑」です。子どもはおおきい組の半分。
30人の子どもたちでした。

●1日目

「お米がとどいたよー」
ダンボール箱を抱えて畑にいくと、子どもたちがわあっと集まってきました。早速、箱を開けると、まずでてきたのは稲穂。
「これがお米だよね」「なんか、かさかさしてるよ」「においがするね」
と興味津々で稲穂を手にとってみていました。
それから、籾の詰まった袋と、お米の袋。籾の袋を開けて、ざるにとりだすと、子どもたちがその中に手を入れてさわってみていました。掌にすくって、においをかいでいました。
「きもちいいね」「いいにおいだよ」
お米をさわりながら、顔をみあわせていました。

はじめに絵本をみて、作業の流れを簡単に説明しました。
・せんばこき稲から籾をはずす
・もみすり籾からお米をとりだす
・精米玄米のぬかをとる
・ごはん炊き
・食べる
今日は、せんばこきともみすりです。

畑の地主さんからお借りした、「せんばこき」の登場です。
畑にある台にせんばこきをとりつけて、稲穂をとおしてみました。
とれます、とれます!わあっと子どもの間から歓声がおこりました。
「やりたい!」「やりたい!」と行列になりました。
送っていただいた稲穂と、クラスの子どもがりんごを買ったときに一緒にはいっていたからと、もってきた少しばかりの稲穂。
それを30人でわけたので、ほんの一本ずつでしたが、全員が「せんばこき」を体験しました。
私たちおとなもはじめての体験でした。籾がせんばこきの櫛歯にあたってしごき落とされるときのピロポロという感触がなんとも楽しくて、快感でした。
これなら千束でもすぐにできそうです。だから「せんばこき」でしょうか。
「できた」と大喜びをする子どもたちの中で、ひとりが「できない」と言いました。
何度とおしてもせんばこきにかからずに残ってしまう籾があるのです。
「なんでだろうね」と何度も持ち変えているのですが、やはりできません。
じゃ、手でやればいいねと触ったとたんに「あ一!なかみがはいってない!」。これには驚きました。
あの櫛歯のすきまは空の籾をよりわけるほどに計算しつくされたものだったんですね。
ほんとによくできた道具だと心庭驚き、感激しました。

稲からはずした籾と送っていただいた籾。いよいよ「もみすり」です。
用意したのは、すり鉢とソフトボール、野球のボール。すり鉢に籾を少量いれて、ボールでごりごりとこすりつけ、籾をとります。
この方法は、図書館の本で調べました。ダンボールでつくった簡易式の『箕」も用意しました。
2,3人でひと組になって、はじめます。ゴリゴリゴリゴリ・…。
ひとりがすり鉢をおさえて、もうひとりがボール。疲れたら交代、といろいろ工夫しながら、子どもたちはがんばりました。
でも、ちっとも籾はとれません。
「できな一い」
せんばこきに比べると、ずっと根気のいる作業でした。
あとでわかったのですが、最初のうちはなんだか米をつぶしてしまいそうで、遠慮がちにやっていたので、なおさらできなかったのです。
それでも、続けてやっていると、いつのまにか、すり鉢のなかに籾がらがたまってきます。
すり鉢のなかみを「箕」にあけて、息をぷうっとふきかけながら箕を宇動かすと、籾がらが風にとばされて宙に舞います。
「箕」をみあげている子どもたちの頭の上にもみがらが振りそそいで、きゃあきゃあ大騒ぎです。
「ちっともできない」と言いながら、子どもたちは止めませんでした。
「疲れてきたら、あそんでいいよ」と言ってあったのですが、みんな止めずにゴリゴリゴリゴリ・・
なぜか、ひきこまれてしまう作業なんですね。
その秘密は、やってみないとわからないと思います。
「だんだんうまくなっていく」感触が、手に伝わってくるのです。
はじめは、ただゴリゴリとすり鉢でボールを動かしているという漠然とした感じだったのが、集中してやっていると、籾がらがはずれる感触が手に伝わってくるようになります。
籾の角ばったところがすり鉢のみぞに入って、ゴリッとはずれるのが、次第にわかるようになるのです。
そうなってくると、手はほんとうに偉くて、もっと多くの籾をはずすようにと工夫をはじめるのです。
ボールの持ちかた、動かしかた、すり鉢の傾けかた。一度にどのくらいの量をすり鉢にいれたらいいかなど・・。
そうして、自分たちのやっていることがわかってくると、子どもはもっと工夫をしはじめます。
籾を大きなバットに移して、その上に麺棒をゴロゴロ転がしてみる子、すり鉢にいれた籾をもちつきのようにめん棒でトントンついてみる子・・。
こんなに全員が熱心にやるとは思っていなかったので、すり鉢もボールも数が足りなくて、精米に使うはずだった空き瓶と棒もだして、トントンついてみたりもしました。
その日は一日中、たっぷり籾すりをした日でした。

●二日目

二目目は、風の強い日でした。びゅ一びゅ一風のふく中で、朝から籾すりをする子どもたちがいました。
今日は、「箕」を使う必要がありません。籾がらがでるそばから、風にふきとばされて飛んでいってしまいます。
「かぜさ一ん、ありがとう〜〜ってかんじだよね一」とおしゃべりしながら、手慣れた様子でボールを動かす子どもたちでした。
籾すりでできた玄米と、送っていただいた白米。両方をあわせて、羽釜でごはんをた
きました。お米をといで、たき木をもやして。
もともとは、「羽釜で炊いた、おいしいごはんを子どもたちに食べさせたい」という思いではじめたことでした。
この日のために、購入した羽釜です。
おかずは、大根のみそ汁、おつけもの、めざし。シンプルにごはんを食べる献立です。
お釜は炊ける途中にもシュウシュウと音をたてたり、湯気をあげたり、賑やかでした。
途中で、お釜の蓋をちょっとあけて、ないしょの味見もしました。蓋の間からのぼる湯気のにおいをかいで、「ごはんのにおいになってきたみたい」とわくわく待っていました。

「たけたよ一!!」
お釜のふたをあけると、わあっと湯気がたちのぼります。
「ごはんのにおい!!」「おいしそう!!」
しゃもじでざっくり混ぜると、「ひとくち」「ちょっとだけ!」と待ちきれずに手をのばしてきます。
大きなしゃもじにくっついたごはんを「あちあち」といいながら味見しました。
お釜の底から返していると、おこげがみえてきました。
「あ一、おせんべみたいになってる!」
「あじみ、あじみ!」
子どもたちは、もうツバメの赤ちゃんたちみたいに口をあけています。
「おいしい!」とまたまたおこげの試食タイム。それからやっと、ごはんの支度。
みんな、もりもり食べました。何度もおかわりをしました。お釜の底のおこげも小さなおにぎりに握っておいたら、「もうおなかいっぱい」とごちそうさまをした子までもう一度やってきて、ぱくぱく食べていました。

2升3合のごはんを、30人の子どもと4人のおとなで平らげました。おとなはもう少し食べたかったなあっていうくらい。
子どもたち、ほんとによく食べました!
帰りの前に、もう一度絵本をみました。
お米の栽培の一年間、稲穂からごはんになるまでの行程が説明されている写真絵本です。
みんな、くいいるようにみていました。最初の時と、みる目が違います。
小さな稲の花が咲いて、実をむすびはじめた写真では、「おこめできてる!」と歓声があがりました。
「たね籾」ということばも、子どもの印象に残りました。
「もみって、種のことなの?」「籾を播くと、稲がはえるの!」「まいてみたい!」と驚いていました。
おもしろかったのは、ひろいひろいたんぼに実った一面の稲をみたとき、「こんなにいっぱいでたいへんだねえ!」「ほんと一」という子どもたちの反応。
あれだけでも、こんなに大変な籾すりだったのに、と思ったんですね、きっと。
今まで当たり前に食べていたごはん、お米がちょっと違って見えてきた体験だったと思います。
大変だったけど、面白いて、驚きと発見に満ちた二日間でした。
そして、なによりも、おいしかった!!大満足でした。

翌日は、動物園への遠足でした。私たちは、稲穂から籾をとったあとの「藁」を持って、動物園に行きました。ちょうど、お正月の前だったので、わらで正月飾りを作りたいとか、わらじをあみたいという子もいたのですが、子どもたちと相談して、遠足にもっていくことにしました。
動物たちへのおみやげです。動物園では、ほんとうにあちこちにわらが使われていま
した。
シマウマの寝床や水鳥の巣など、いたるところで、「あ、わらあった」と子どもたちも発見していました。
遠足の最後に係員の方に手渡したら、「ありがとう。わらはとっても大事なの。動物のベットにもなるし、ごはんにもなるし、あそびにも使うのよ」と言ってもらい、「わらもやくにたって、おこめっていいね」と子どもたちは話していました。

最後の最後まで、楽しませていただきました。
本当にありがとうございました。
写真とお母さんたちがよせてくださった感想を同封します。
子どもたち、いい顔しているでしょう?本当に、おみせできたらいいのにって思いました。
私たちおとなにとっては、おいしいごはんを食べられて、こんないい笑顔をたくさんみられて、なおさら嬉しい二日間でした。
これも、五十嵐農場さんのご厚意のおかげです。心から感謝いたします。
ありがとうございました。
今回のことを励みにして、これからも、子どもたちと一箔においしいごはんを食べる活動をしていきたいと思いました。
横浜ではもう梅が咲いています。春は近いとはいえ、まだまだ寒い目が続きます。
みなさん、どうぞ、風邪などひかれないように、お元気でお過ごしください。

2月5日
りんごの木子どもクラブ
有吉ゆみこ